しあわせおばけ
しかし…。
俺は考えた。
この年頃の娘に、たやすく幽霊なんて見せてもいいものか。
いや、まあ、正しくは天使だけれども。
この際、肩書きはどうでもいいとして、死んだはずの母親に会わせることに抵抗がないこともない。
現に、そういう理由で今日まで存在をひた隠しにしてきたのだから。
妻自身も、以前は会う心の準備ができていないと言っていたけど、今日は大丈夫だろうか。
いざとなると、いろんな心配事が急に押し寄せてくる。
仕事に戻った妻は、何時に帰って来るだろうか。
できれば、相沢よりも前に会わせたい。
俺は落ちつかない気分で部屋の中を意味もなくうろうろした。