しあわせおばけ

妻が最初に姿を見せるのは決まって和室だから、俺は明日香の様子に変わりないことを確かめてリビングを出ようとした。



そのとき。



「ねー!聞いてよ!新人さんにセクハラされたー!」



馬鹿でかい叫びと共に、天使の羽をバタバタさせて妻が俺に向かって来た。

もちろん明日香が起きてきたとは知らずに。



「…ちょ、おま…!」

「ねー頭くるでしょ!天国のご案内しますって言った途端、お尻触ってきたのよ!」

その勢いに押し戻されるようにリビングに戻った俺は、興奮する妻になんとか明日香の存在を知らせようと必死にジェスチャーでアピールするも、

「即、実行委員会に突き出してやったわ!」

まるで周りなど見えていない妻は、白い羽をばたつかせて喚き散らした。




< 135 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop