しあわせおばけ

「ほんっと信じらんない!死んだ直後よ?普通なら動揺して現実を受け入れられないってあたふたするってときに…」

「わーかったから!ちょっと落ち着けよ、ほら、あっち!」

無理やり妻の訴えを遮りキッチンを指差すと、妻は鼻息を荒くしたまま、指先を目で追った。

「…あっ…!」

今さら口をつぐんでも遅い。

まったく、どんな再会にしようか頭を悩ませた俺の時間は全て無駄になった。



当の明日香はというと、止まったトースターを確かめようとしていたままの中途半端なポーズで動きを止め、俺を見ていた。

真ん丸な明日香の目を見返しながら、

いやいや、見るべきは俺じゃないだろう、この羽の生えた母だろう

と言いたかったけど、この視線はもしかしたら、俺に助けを求めているのかもしれない。



「あ…あのな、明日香…」

俺がやさしく話しかけると、明日香はびくっと肩を震わせて、まるで恐ろしいものを見るような顔をした。




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