しあわせおばけ
「誰とって…ほら、いるだろ?パパの隣に…」
明日香の顔が歪んだ。
「パパ、おかしくなっちゃったの?」
「明日香、違…」
「もういいわ」
俺を制する妻の声は涙声だった。
妻は俺に背を向け、静かにリビングを後にした。
さっきまでピンと張っていた羽が、どことなくしなだれているように見えた。
「紗希…!」
追いかける直前、明日香に目をやると、大きな混乱と少しの恐怖を含んだ幼い目が俺に向いていた。
「すぐに説明するから、ちょっと待っててな」
こんなときは明日香を優先してやりたいけど、でもそうこうしている間に天国に戻られては困るんだ。
俺はごめんと言い置いて、慌てて和室に踏み込んだ。