しあわせおばけ
ひっくひっく…
聞こえるのは、白い羽に包まれた妻の、押し殺した泣き声。
無理もない。
相沢ならともかく、血を分けた我が娘の目に、自分が映らないなんて…-
そのやるせなさは、妻の立場を自分に置き換えてみればすぐにわかる。
「…紗希」
触れられる距離なのに触れられないもどかしさに、奥歯をかみ締めた。
悲しんでいる妻の肩を抱いてやることすらできない俺は、なんと無力なんだろう。
「誰にでも見えるわけじゃないって、言ってたもんな」
子供をあやすように、やさしく柔らかく、背中から声をかけた。
「…でも…あ…あす…明日香には見えるって…信じてた…のに…」
しゃくりあげながら妻が言う。
俺だってそう思ってたよ。
見えないかも、なんて考えもしなかった。