しあわせおばけ

微妙な空気が俺と相沢を包んだ。



相沢は、別部署で働いていた妻を俺に紹介してくれた張本人だ。

つまり、相沢がいなければ、俺は彼女と結婚することはできなかった。

その点、俺は感謝してもしきれないほどの気持ちでいるのだが、その思いを相沢本人に伝えたことはない。

俺にとって相沢は、言葉にしなくても伝わる関係の、ただひとりの存在だ。



「おまえ、ちゃんと食ってんのかよ」

「食ってるよ。痩せたのは、気苦労が絶えないだけだ」

ふざけて明るく言ってみたけど、もちろん相沢は笑わなかった。

「…明日香ちゃんとは、うまくやれてんのか?」

「……」

答えられない俺に、今度は相沢が明るい声で言った。

「話、聞くよ。何でも言えよ。俺とおまえの仲じゃん」



< 14 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop