しあわせおばけ
微妙な空気が俺と相沢を包んだ。
相沢は、別部署で働いていた妻を俺に紹介してくれた張本人だ。
つまり、相沢がいなければ、俺は彼女と結婚することはできなかった。
その点、俺は感謝してもしきれないほどの気持ちでいるのだが、その思いを相沢本人に伝えたことはない。
俺にとって相沢は、言葉にしなくても伝わる関係の、ただひとりの存在だ。
「おまえ、ちゃんと食ってんのかよ」
「食ってるよ。痩せたのは、気苦労が絶えないだけだ」
ふざけて明るく言ってみたけど、もちろん相沢は笑わなかった。
「…明日香ちゃんとは、うまくやれてんのか?」
「……」
答えられない俺に、今度は相沢が明るい声で言った。
「話、聞くよ。何でも言えよ。俺とおまえの仲じゃん」