しあわせおばけ
セクハラされて引き返してみれば、娘からは認識されずに、思わず涙。
それも無理はない、散々な一日だ。
かける言葉が見つからずに、ただ傍に座っていると、和室の入り口に明日香が立っていることに気がついた。
部屋には入らず、中を伺っている。
「明日香、こっちにおいで」
俺の声に反応して、妻の背中がぴくりと動いた。
明日香は恐る恐る畳に足を踏み入れ、俺との間に微妙な距離を置いて座った。
…俺の近くがそんなにイヤか?
とか言ってる場合じゃない。
俺は妻のほうに向けていた体を明日香のほうに向けて、ゆっくり口を開いた。