しあわせおばけ
「信じられないかもしれないけど、今ここに…ママがいる」
明日香の目が少し見開いた。
「明日香も知ってるとおり、ママは去年天国に逝ったよね。でもな、何日か前に突然、パパに会いに来たんだ」
あまり夢物語みたいにならないよう、それでいてきちんと現実として受け入れてほしいと願いながら、言葉を選んで話す。
「ママ、天国で天使になったんだって。それで、パパと明日香のこと心配して様子を見に来てくれたんだよ」
「うそ」
「嘘じゃないよ」
「明日香はなんにも見えないもん。パパ、明日香が無視ばっかりするからそんなうそ言って明日香の気を引こうとしてるんでしょ」
一体どこで気を引くなんて言葉を覚えたのか、口ばっかり達者な明日香は、睨むような目つきで俺を見ていた。
「そんなんじゃないよ。今だって、ほら」
俺は眉間にシワを寄せて涙を流す妻に視線を向け、
「明日香にママの姿が見えなくて残念だなぁって言ってるよ」
と妻の気持ちを代弁した。