しあわせおばけ
「ちょっと待て」
「イヤよ!私は明日香と仲良く作りたかったの!」
妻は駄々っ子の顔をして、天国に帰ると言った。
「気持ちはわかる。でも聞いたろ?紗希のカレーコロッケ作れたら信じてくれるって」
「…~っ。でも私、材料に触れることもできないのよ。あなた、口頭の指示だけでできるの?」
「もともとそのつもりだったんだから、やるよ。それに相沢ももうすぐ来るし、ふたりいれば何とか…」
「私は明日香と目を合わせて微笑みながら作りたかった!」
そんなこと、何度も言わなくたってわかってる。
でもこういう展開になってしまったんだから、すべきことは次の段階へ前向きに進むことだ。
「俺が通訳になって、お前と明日香の間に入るから」
「女同士の話ってもんがあんのよっ」
完全にヘソを曲げた妻の言葉遣いが乱暴になってきた。