しあわせおばけ
明日香の部屋の、キャラクターものの壁時計を見る。
いつの間にか時間が経っていて、相沢との約束の1時を少し回っていた。
「もうこんな時間か…」
俺は会話を打ち切って、慌てて階段をおり、玄関の戸を開けた。
「よっ」
前回と同じケーキの箱を持った相沢が、それを軽く上げて笑顔を見せる。
「駐車場から歩いて来るだけでも暑かっただろ。ありがとな」
車で来たはずなのに、相沢の額にはすでに汗が浮いていた。
「マジで、この日差しやべーな」
「すぐ冷たいお茶持ってくから、適当にくつろいでろよ」
「はいよー」
今日の目的を忘れているわけじゃないけど、何事もないように振る舞ってしまう。
それは逆にお互いが緊張していることを示しているようで、居心地がよくなかった。