しあわせおばけ

明日香の部屋の、キャラクターものの壁時計を見る。

いつの間にか時間が経っていて、相沢との約束の1時を少し回っていた。

「もうこんな時間か…」

俺は会話を打ち切って、慌てて階段をおり、玄関の戸を開けた。

「よっ」

前回と同じケーキの箱を持った相沢が、それを軽く上げて笑顔を見せる。



「駐車場から歩いて来るだけでも暑かっただろ。ありがとな」

車で来たはずなのに、相沢の額にはすでに汗が浮いていた。

「マジで、この日差しやべーな」

「すぐ冷たいお茶持ってくから、適当にくつろいでろよ」

「はいよー」

今日の目的を忘れているわけじゃないけど、何事もないように振る舞ってしまう。

それは逆にお互いが緊張していることを示しているようで、居心地がよくなかった。




< 147 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop