しあわせおばけ
「…あっ!そうだ…」
目的といえば、和室に置き去りにしてきたアイツ。
俺は冷たい麦茶のグラスを相沢に渡すと、
「すぐ戻る」
と足早に和室を目指した。
「紗希…?」
そっと顔をのぞかせて、中の様子を伺った。
冷房を入れていない部屋は、少しドアを開けただけで蒸し暑い。
サウナのようだと思った。
「紗希、暑くないか?」
まださっきと同じ場所でうずくまっていた妻は、ゆっくり顔を上げた。
「大丈夫」
その柔らかい表情から、平静を取り戻したことがわかった。