しあわせおばけ

昼休憩に入り、俺と相沢は会社の近くの定食屋に行った。

社員食堂なんて立派なものはないから、ほとんど毎日ここに世話になっている。



「明日香がさぁ、俺と全然しゃべってくれないんだよ」

俺が悩みを打ち明けると、相沢は驚いた顔をした。

「だっておまえ、もうすぐ1年じゃないか。これまでずっとそうだったのか?」

「うん」

「…何で早く言わないんだよ!」

相沢は呆れたと言わんばかりにため息をついて、とんかつにかぶりついた。

「や、こんなこと相談しても迷惑かなって…」

「迷惑って…さっきも言ったけど俺とおまえの仲に、そんなものは存在しない!」

とんかつを口いっぱいに頬張りながらしゃべる相沢は醜かったけど、『そんなものは存在しない』のひと言で、俺の心は格段に軽くなる。



俺が不器用に口の端を上げると、相沢はそんな俺の内心を全部見透かしているかように、軽く笑った。



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