しあわせおばけ

「明日香ちゃん、ママのこと見えないんだってね」

明日香は黙って頷いた。

「でもほら、俺にもパパと同じように見えるよ。明日香ちゃんのママ、ここにいるよ」

明日香はその相沢の視線の先を、不安げなまなざしで見た。

「…おばけなの?」

「ん…まあ、間違ってはいないが…でも、キレイな天使さんだ」

「天使さん…?」

明日香の瞳が、小さく潤んだ。



妻は、あふれる涙を拭うことなく、まっすぐに明日香を見つめている。

こぼれ落ちた涙の滴は、キラリと光って消えていく。

美しく、不思議な光景だった。



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