しあわせおばけ
高らかな笑い声。
俺が間に入っているとはいえ、妻はもちろん、明日香も本当に楽しそうで、まるで妻が病気になる前に戻ったような錯覚さえ覚えるほどだ。
笑い声どころか会話すらなかった近頃を考えると、嘘のよう。
明日香の夏休みもあと少しとなった今、本当は3人で旅行にでも行けたらいいのだけど、妻が家から出られないとあっては無理な話だ。
でもこうして会えるだけも贅沢なんだから、これ以上を望んではいけないと自分に言い聞かせる。
「ねぇ、明日香に宿題終わったのって聞いて」
「そんな説教くさいこと聞くのやめろよ」
「何言ってるの!こんなでも母親なんだから当然のことよ」
「はいはい…明日香ぁ、夏休みの宿題、終わった?」
「ほとんど終わったー」
「あと何が残ってるんだ」
「んっとねー、待ってて」
そう言って、明日香が2階の自室から、1枚の紙を持ってきた。