しあわせおばけ
「親身になって聞いてくれるの、相沢だけだよ」
思わず弱音を吐くと、相沢はすぐに否定した。
「そんなことねぇよ、みんな心配してる」
そう言われて、俺の脳裏にやさしい同僚たちの顔が浮かんだ。
「でもさぁ、『何か力になれることありませんか』って、みんななぜか俺に聞いてくるんだよね」
本人に聞けっつーの、と苦笑いを浮かべる相沢に、俺は頭を下げた。
「ありがとう」
相沢は慌てて俺の頭を持ち上げて、やめろよ、とあたふたしていた。
「いてっ」
「え?ごめん、力入れすぎた」
「あ…いや」
俺は相沢に触られたおでこを押さえて、思わず笑った。
「そういや今朝、目覚ましが頭に落ちてきたんだ」
なんだよそれ、コントか、と相沢が言ったとき、少しだけ1年前の空気を取り戻せたような気がした。