しあわせおばけ
【夏休みの思い出】
原稿用紙の1行目に、明日香の拙い文字がそう記していた。
―…思い出、かぁ。
コロッケパーティまではろくに親子の触れ合いもなく、パーティ後だって毎日家の中でこうして笑っているだけで、思い出作りなんて何もしていない。
まさか作文に天使がやってきたなんて書くわけにもいかないし…―
「コレ、今から書こーっと」
明日香が筆箱と原稿用紙をテーブルに並べて言った。
「書くって、何を?」
「あとで発表会するね!」
「お…おお…」
明日香は妙にワクワクした表情で、夢中になって原稿用紙と向かい合った。
いったい何を書くつもりなのか、発表会とやらが楽しみだ。