しあわせおばけ
俺の目の前の天使が鼻をすすると、フワフワの羽がほわんと揺れた。
「あーあ、作文に感動して、ママまた泣いてるぞ」
「やっぱり私…天使になってよかった…ぐすっ」
「残念ながら作文中ではおばけって書かれてるけどな」
「それでもいい。あなただけじゃ、明日香、こんなかわいらしい作文書けなかったもの」
「余計なお世話だっつーの」
まあ、その通りすぎて、否定はできないけど。
俺が苦笑いを浮かべていると、ツンツンと肘を突かれた。
横を見ると、明日香が唇を尖らせていた。
「明日香もママとお話したい」
「あ…ああ、ごめんごめん」
必ずふたりの間に入ると約束したのに、実際に会話を成り立たせるのは、案外難しい。
ちょっと気を抜くと、すぐに普通に話してしまって、よくこうして明日香にヤキモチをやかれてしまうのだ。