しあわせおばけ
こうして明日香の夏休みは終わった。
家族が家族を取り戻してからは、毎日があっという間に過ぎてしまって、名残惜しい夏の終わりだった。
2学期が始まって最初の木曜日。
仕事を終えた俺は、明日の弁当用にスーパーの冷凍食品を買いあさり、帰宅した。
リビングに入ると、テレビの前のソファに明日香と妻が仲良く並んで座っていた。
妻は羽をしまい込んでいて、こうしていると生前の姿と何ら変わりない。
だけど実際は、明日香の目には隣に座る母が見えていないし、テレビを見て笑う声も聞こえていない。
なのに不思議と、ふたりの周囲には、ちゃんと親子の空気が流れていた。
「ただいま」
ふたりの背中に向かって言うと、
「おかえりー」
ふたりの声がシンクロした。