しあわせおばけ
俺としたことが、こんなことにも気付かないなんて。
家族とはいえ、妻だって女性なんだから言い出しにくかったに違いない。
俺は慌てて妻の正面に回り込み、言った。
「紗希、トイレ我慢してるんだろ?ごめんな、気付かなくて。一旦天国に戻って済ませ…」
「バカッ!違うし!」
食い気味に否定した妻は、一瞬頬を膨らましたと思ったら、すぐに笑い出した。
「…プッ、やだもう!あははは!」
「え?あ、あははは」
俺もつられて笑ってみる。
「トイレ…じゃなかった?」
「違うわよ、バカね」
妻は目尻の涙をそっと拭って、優しい眼差しを俺に向けた。
そして…-