しあわせおばけ
それから俺たちの間に会話らしい会話もなく、時間は淡々と過ぎて行った。
でもまあ、掃除を一緒にやってくれるだけでもかわいいもんか、なんて言い繕っているうちに、明日香はいつの間にか掃除を終えて、ソファに寝転がっていた。
「明日香、パパ2階の部屋の掃除してくるから、相沢来たら呼んでね」
と声をかけても、明日香の返事はない。
階段をのぼりながら考えた。
俺は明日香に、どのくらい『パパ』と呼ばれていないだろう。
妻が亡くなった直後は明日香も動揺していたし、いちばん身近な大人である俺のそばにずっといた。
でも四十九日の法要のあたりから、ママがいなくなった現実を認識し始めて、俺との距離を置くようになった気がする。
理由はわからない。
まさかママはパパが殺したんだなんて思ってはいないと思うけど…何か気に入らないことでもやってしまったのだろうか。
どうすれば、明日香は俺に心を開いてくれるのだろうか。
こんなとき、妻が相談に乗ってくれたらどんなに心強いだろう…―