しあわせおばけ
俺は、泣きそうなのを悟られたくなくて、無理に口の端を上げて笑顔を作った。
こんなにじっと目を見られているんだから、涙目なことなんてとっくにばれてると思うけど。
「ねぇ、あなたは私が好き?」
妻の瞳の中に、俺が映っている。
今にも涙がこぼれ落ちそうな、情けない顔をした俺が。
「そんなの…当たり前だろ」
「…ちゃんと言ってくれなきゃ、わかんない」
「…好きだよ」
こういうことを口にするのは、いつまで経っても慣れない。
俺は、一気に顔が熱くなるのを感じた。
妻は、そんな俺を見て、うれしそうに微笑んだ。