しあわせおばけ
「お疲れさん」
「あの、ここ、いいですか?」
佐伯さんは、俺の隣の椅子に手を添えている。
「どうぞ」
「失礼しまーす」
座るなり、俺の顔をひょいと覗き込んだ。
「…風邪、もう大丈夫なんですか?」
「あ…う、うん…ゴホッ…だいぶ良くなったよ」
あんなに大袈裟に演じた先週末の手前、油断できない。
「困ったことがあったら、私、いつでもお世話しに行きますから、遠慮しないで何でも言ってくださいね」
「ありが…ゴホッ…ありがとう」
向かいで相沢が懸命に笑いを堪えているのを、どうか佐伯さんに気付かれませんように。