しあわせおばけ
佐伯さんは作文のコピーをまじまじと見つめ、しばらくして顔をフイッと上げると、
「…わぁ~」
と、優しく目を細めた。
「素敵な発想ですね。お父さんにだけ見える天使かぁ」
「そ…そう…?」
「こういう形で、お母さんは娘さんの心の中に生きているんですよね。ちょっとウルッとしちゃいました」
佐伯さんの目には、本当にうっすら涙が浮かんでいた。
「それ実話だって言ったら、どうする」
こんなとき、こんなふうに余計なことを言い出すのは、相沢の十八番だ。
佐伯さんは、え~、と少し笑ってから、
「そうですねぇ…やっぱり、素敵だと思います」
とまた作文に目を落とした。
「まじ?おばけだよ?」
相沢がしつこく食い下がる。