しあわせおばけ
どうやら今の明日香には、俺の姿が見えないらしい。
相沢も明日香の態度に気が付いて、俺にチラリと目配せを寄こした。
俺はちょっと口元を歪めて、首を横に振った。
な、最近はこんな感じなんだよ…―
言葉に出さなくても俺の言いたいことは的確に伝わって、相沢は明日香にわからないように、肩をすくめてみせた。
「明日香ちゃんはどれがいい?俺は残ったのでいいから、自分の分とパパの分、明日香ちゃんが選んでいいよ」
「えー…」
パパの分も、という相沢の言葉に、明日香はあからさまにイヤそうな表情を浮かべた。
こうなるともう、悲しいとかではなく、ある種の挑戦のようにも感じる。
「色とりどりでキレイだなぁ、明日香、好きなの選べよ」
ソファに座る明日香の隣に滑り込んで、後ろから抱きしめてやると、
「…もうっ!やめてよ!」
明日香はめちゃくちゃ怒った。