しあわせおばけ
自室に閉じこもった明日香は、相沢の説得にも応じず、夕方になってもまだ俺たちの前に姿を見せなかった。
ただし、相沢とふたりで夕飯の買い物に出かけて帰ってみると、冷蔵庫のケーキが2つ減っていたので、とりあえず放っておくことにした。
夕飯は手っ取り早くカレーだ。
俺がぎこちない手つきで玉ねぎを切っていると、
「今夜泊めてくれ」
と相沢が言った。
「え?なんで」
「こんな状態で帰っても、心配でおちおち寝てられん」
「大丈夫だよ。カレー食ったら機嫌直るだろ」
俺が楽観的に言うと、相沢は冷蔵庫をバンッと乱暴に閉めて、俺をギロリと睨んだ。
「明日香ちゃんは俺にとって姪っ子のようなものなんだ。このまま間違った方向に歩んでいったら、おまえ、どうしてくれる」
「まさか」
間違った方向というのはおそらく非行に走るという意味だろうが、明日香に限ってそんなこと、あるはずない。