しあわせおばけ
泣きたいのは俺のほうだ。
明日香さえ歩み寄ってくれればうまくいくのに、俺が近づけばその分、いや、それ以上に離れていく。
「そんなに相沢が好きなら、相沢がパパだったらよかったのにな」
つい、そんな言葉が口をついて出た。
明日香がアイザワクンと連呼することに対する、つまらない嫉妬心からだった。
「三国、ちょっと落ち着けって…」
「ごめんな明日香、こんなパパで」
相沢の言葉に耳を貸さず、吐き捨てるように言うと、明日香がハッと顔をあげた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔がかわいくて愛おしくて、でも、抱きしめる気にはなれなかった。
相沢に慰めてもらえばいいだろ。
本気でそう思った。