しあわせおばけ
俺は昔から険悪な空気が苦手だった。
そういう雰囲気になると、なんとかして場を和ませようとするタイプで、だから友達とも家族とも、これまで喧嘩らしい喧嘩をしたことがなかった。
つまり明日香と相沢は、こんな様子の俺を見たことがない。
そして俺自身も、こんな気持ちになるのは初めてと言っても過言ではなく、どうしたらいいのか戸惑うほどだった。
とりあえず、高ぶる気持ちを落ち着かせたい。
俺は、最高に気まずい空気に包まれたダイニングテーブルで固まるふたりに、
「ごめん、ちょっと部屋で休んでくるわ」
と告げて席を立った。
その瞬間だった。