しあわせおばけ
俺の家は、妻の妊娠がわかったときに思い切って買った一軒家だ。
1階にはリビングとキッチン、そして洋室と和室がひと部屋ずつある。
洋室は来客用のベッドルームになっていて、和室は妻の仏壇が置いてあるほか、冬にはこたつを出して団欒できるようになっていた。
2階には洋室が4部屋あって、そのうちのひとつを明日香、その隣の部屋を俺が使っている。
残りの2部屋の使い道は、今のところない。
明日香が大きくなったら物も増えるだろうし、そういうときに臨機応変に使えればいいかなくらいに考えていた。
庭に出てみれば、妻が生前植えたレモンや桃の木が少しずつ成長しているし、朝顔で作った緑のカーテンは今がピーク。
そしてプランターで育てている夏野菜も、まずまずの収穫高をあげている。
そんなお気に入りのマイホーム。
だけど中に一歩足を踏み入れてみれば、そこは不協和音が鳴り響く、居心地の悪い空間だった。