しあわせおばけ
ちょっと待て。
ちょっと待て、俺。
幻聴の次は幻覚か。
俺の心は、とことん病んでしまったのか。
でもたしかに見える。
妻…にしか見えない女性が、和室の入り口に立って微笑んでいる。
「びっくりした?私もまさか会えるなんて思わなかった」
しゃべった…!
やっぱりさっきの声も、この幻のものだった。
何か反応しなくてはと思うものの、俺はというと、首を後ろに向けたまま、固まってしまって動けないでいた。