しあわせおばけ
「それから3ヶ月、私はとうとう力尽きた」
いつの間にか枕元に移動したらしい妻(仮)の声が、すぐそばで聞こえた。
「私、最後のあなたの言葉、ちゃんと覚えてるわ」
「最後の…言葉?」
顔を覆っていた両手を外すと、真上から妻(仮)が俺の顔を覗き込んでいた。
天井の電気が彼女を背後から照らしていて、なんだか後光が差しているようだった。
「…俺、最後に何言ったかなんて、覚えてないよ」
「そうなの?でもきっと、私がここにいる間に思い出すわ」
「ここにいる間にって…」
「それでね、続きだけど」
肝心なところで、話を逸らされた。
ここにいる間って、彼女はこの家に居座るつもりなのか。
そうだとしたら、それはいつまでなのか?