しあわせおばけ
信じるって、何を?
この、妻の姿を模した人間が、人間ではないということを?
現実的に生きる俺に、それを信じろっていうのか?
「あなたが何を言おうとしているのか、だいたいわかるよ。でもな、そんなことありえないんだ」
「どうしてそう思うの?それなら私は誰だっていうの?」
「…誰って…」
結局また、数分前と同じ質問に戻った。
でも正直なところ、ありえないと言いつつも、それ以外にはこの人について説明がつかないのも事実だ。
「…じゃ、そこまで言うんなら、証拠を見せてくれよ。あなたが…その…紗希だっていう証拠を」
「証拠…」
妻(仮)はしばらく考えるそぶりを見せると、おもむろに立ち上がった。