しあわせおばけ
部屋の中央、明かりの真下で、妻(仮)が両手を広げる。
彼女は誇らしげな笑みをたたえ、こう言った。
「これが証拠よ」
「…は?」
五体満足な全身をアピールされても、俺には何のことやらさっぱりわからなかった。
眉を寄せる俺に、彼女は、
「下、下」
と畳を指差した。
「…下?」
言われた通りに畳を見ても、とくに何も不自然な点はない。
畳と妻(仮)の顔を交互に見比べる俺に、彼女は苛立った様子で、
「もうっ、ちゃんと見てよ!ほら、ないでしょ、影!」
と足元を指差しながら頬を膨らませた。