しあわせおばけ
「たたた体温があるってことは、そんなの、血が通ってるってことじゃないか。そんなの、そんなのって…」
「ねえ、ちょっと落ち着いて」
妻(仮)は動揺する俺の正面に座って、なだめるように言った。
俺は胸に手を当て、呼吸を整えようとするが、なかなかうまくいかない。
そういえばさっき、俺が寝転んでいて、真上から覗き込まれたときも、全然暗く感じなかった。
天井の明かりが、彼女に影を作るどころか、輝かせているようにさえ感じた。
足や体温のことは、表現がおかしいけど、人間が作り出したキャラだとして…―
もうこれ以上、引っ張ることはできそうにない。
この人はたぶん、
妻(仮)ではなく、
妻なのだ。