しあわせおばけ

相沢は、明日香のことをとても大切に思ってくれている。

明日香もまた、相沢のことを『アイザワクン』と、妻が相沢を呼んでいたときの口調を真似て呼ぶほど、親近感を持っているようだ。

俺から見たって、俺と明日香よりも相沢とのほうが、よっぽど親子らしく見える。

キャッキャとテンション高く出かけていく明日香の姿が目に浮かぶようだった。



「どうしたの、悲しい顔して」

妻が言った。

「べつに…。父親としてのふがいなさが情けなくなっただけだよ」

「そんなことないわよ、明日香があんな態度なのは、あなたに甘えてるからよ」

まるで子供に言い聞かせるように、やさしい口調で妻が俺を元気づけようとしてくれる。

妻にしろ相沢にしろ、やさしくされればされるほど俺の惨めさが際立つばかりだけど、今の俺にはそういう気持ちが何よりうれしかった。

「本当にそうならいいけど。オンナって難しいねぇ」

俺がわざとふざけて言うと、妻は、ふふ、と笑った。

「ね、気を取り直して。いいもの見せてあげるから」



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