しあわせおばけ
妻はまた俺のほうに向き直った。
さっきまでと違うのは、その背後に大きく広がる羽があること。
それだけなのに、なぜか俺の目には、妻がより一層眩しく映った。
影もなく、部屋の明かりを吸収して輝く白い羽に包まれるように微笑む妻は、美しかった。
それはまさしく、
この世のものではない美しさだった。
「さっき私が、就職したって話したの、覚えてる?」
「ああ…そういや、そんなようなこと言ってたな」
まだ俺がパニックだったときに聞いたきり、スルーしていた。
「私がいる天国にはね、街があるの。街には家やお店、いろんな施設があって、そこで働くことができるのよ」
妻は、まるで初めて行った外国の話でもするかのように言った。