しあわせおばけ
「天国で与えられた家に住んで、やりたいことを探すようにって言われたんだけど、私、何もやりたいことなんて見つからなくて」
妻の摩訶不思議な天国話に、普通に耳を傾けられる自分がいちばん不思議だ。
でもこうなったら何でも受け止めてやる。
「そんなとき、担当の天使さんが私に言ったの。『私、もう成仏しようと思うから、私の代わりに天使やってみない?』って」
「代わり?」
え、何?
天使って、担当制なの?
成仏しようと思うって、そんなの自分で決めるの?
受け止めると決めたそばから、疑問は尽きない。
「そうよ、死んだ人間は、まず担当の天使さんに天国の仕組みや過ごし方を教えてもらうの。そしていざ街へ出て、実際に天国生活が始まる」
天国生活。
なんて素敵な響きだろう。
俺は一瞬うらやましいと思ってしまったが、でもその生活は、俺の想像とはちょっと違うようだった。