しあわせおばけ
天国に種類があるなんて、考えもしなかった。
というか、天国の存在そのものを信じたことすらなかった。
そんな俺が、今、天国の組織について積極的に知ろうとしている。
確認しておくが、俺はまだ死んでない。
「紗希は守護型天国ってことは…守護霊なのか」
「違うわよ、天使だって言ってるでしょ。霊とか言わないで」
会話の主導権はすっかり妻に握られている(最初からだけど)。
妻は背中に生える大きな羽を愛おしそうに撫でながら、話を続けた。
「天使になるのって、案外難しくないのよ。希望者が少ないんだって。こんなに素敵な羽だってもらえるのにどうしてかなって思ったんだけど、なってみて、理由がわかった」
天国には、新人、つまり亡くなった人を迎えるための出入り口とも呼べる場所がある。
そこで働くのが天使であり、天使たちはそこを案内所と呼んでいると妻は言った。