しあわせおばけ
「ただいま」
玄関には明日香のスニーカーが脱ぎ散らかしてある。
俺はそれと自分の革靴をきちんと揃えて、玄関にいちばん近い和室の戸を開けた。
今日も異常なし。
リビングにいくと、明日香がソファに寝転んでマンガを読んでいた。
「明日香、ただいま」
声をかけると、明日香は返事のかわりに俺に冷たい視線を寄こした。
―…『相沢がパパだったらよかったのにな』
そう言って突き放したのは自分だ。
勢いだったとはいえ、口にしてはいけない言葉だった。
明日香は、怒っているのかショックなのか、あれから俺とは一切しゃべってくれなくなった。