しあわせおばけ
しゃべってくれないだけならまだしも、明日香は、毎日和室ばかり気にしている俺のことを、どうやらだいぶ訝しんでいる様子だ。
まあ、無理もない。
俺自身だって、どうかしてると思うくらいなんだから。
「晩飯にコロッケ買ってきたよ。ご飯炊くから、ちょっと待っててな」
俺はスーツを脱いで、代わりにエプロンを着けた。
明日香はじゃがいもがキライなのに、コロッケは大好物だ。
とりわけ妻が作ったカレーコロッケが好きだったけど、それが食べられない今は、俺が会社の近くの肉屋で買ってくるコロッケで我慢してもらっている。
「そういえば来週から夏休みだろ。どこか行きたいとこ、あるか?」
「……」
「まだママの一周忌が終わってないから泊まりは無理だけど、日帰りならどこでもいいよ」
「……」
「パパも考えとくな」
完全に独り言だが、それにも慣れつつある。