しあわせおばけ

洗い物を終えると、俺は家に帰ってから初めてくつろぐことができる。

ソファに深く腰をおろし、テレビのスイッチを入れ、缶ビールに口をつける瞬間は、至福のときだ。

今日もお疲れ、俺。

もう倒れたりしないように体力つけてしっかり寝て、たまには酒でも飲んで息抜きもしろよ、俺。

じゃないと、また明日香に心配かけちゃうからな。



近くに労ってくれる人がいないから、自分で労ってみる。

虚しくないこともない。

でも、家事にも明日香のご機嫌伺いにも疲れ果てていただけの数日前までに比べれば、ずっと楽しい時間の過ごし方をしていると思った。

そんなことを考えながら、なんとなく明るい気分でふた口めのビールをごくりとやったときだった。

突然、テレビが消えた。

「…あれ?」

リモコンはテーブルの上で、俺は触れていないのに、なぜだろう。

と、そのとき、背中にゾワリと悪寒が走った。




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