しあわせおばけ
「晩御飯がコロッケだったなら、明日香はご機嫌ね」
「おお、おかげで今日は無視されなかったぞ」
「でも相変わらず、会話はしてもらえなかったわね」
「うるせー。これからだよ」
妻は天国で俺たちのことをどこまで見ているのか、わりと今の状況を理解しているようだった。
「あなた、自分でコロッケ作ってみたら?」
「は?」
突然の提案に、面食らう。
「だって明日香は、本当はカレーコロッケが好きなのよ」
それは知ってるけど、でも…―
「揚げ物なんてやったことないし…それに、あいつが好きなのは紗希が作るカレーコロッケだよ」
「だから…」
妻の顔が触れそうなほど近くに寄せられて、俺はドキッとした。
「私が教えてあげる」