しあわせおばけ

「だって火曜日にコロッケ食ったばっかなのに、また土曜日にコロッケじゃ、明日香がヘソ曲げるじゃんよぉ」

弱々しく抵抗してみるものの、妻はフワリとテレビから飛び降りて、ソファに座る俺の目の前に仁王立ちした。

「大丈夫。今日のはカレー味だし、好物なら一週間くらい続いたってむしろ嬉しいくらいよ」

「だったら紗希が作ってくれよ」

「…それはダメ」

「どうして?」

「どうしても!とにかくちゃんと教えるから作ろうよ」

妻は地団駄を踏んだ。

子供か!

「わかったよ、わかったから」

地団駄を踏んでも物音ひとつしなくて、こういうときに、ああ本当に幽霊なんだなって実感する。

でも普通にしゃべったりしているだけのときは、本当に以前の暮らしに戻ったような自然な空気が包み込む。



俺にとって、この突然の再会は、感動よりも安らぎを与えてくれたと言ったほうがしっくりくるだろう。




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