星を見るたび、君に恋した。
カフェから出ると春の夕焼け。


春の風から新しい匂いがした。
「麻里香、またね。明日」
千佳ちゃんが手を振ると同時に
ブレスレットがシャラリ、揺れた。



「分かった!バイバイ。」
今日着ていたスカートが風を感じていた。



千佳ちゃんの後ろ姿をあたしはジッと見つめて、
それから自分も家に帰った。








「ただいまー」
家につくと夕飯のいい香りが部屋中に広がっていた。


「おかえりなさい、麻里香ちゃん」
出迎えてくれるのはお母さんじゃない。
お手伝いさんの美和さんだった。


「今日もありがとう。」
「いえいえ、今日は天ぷらですよ」
「やった、好物っ」



美和さんは笑って、また天ぷらを揚げ始める。


あたしにお母さんがいないわけではない。
仕事が忙しいから、家事をしてくれてるのが美和さんだった。


小さい頃からお金に困ったこともないし、
結構裕福な家庭だった。
でもその分小さい頃、お母さんとお父さんと過ごした事もあまりない。



さみしい、とか悲しいなんてあまり思った事もないし。
ぶっちゃけなんだっていいんだと思う。


あたしに中学受験をしろと言ったのも、
あたしの面倒が見れないからだと思うし。


まぁ、受験しなかったんだけどね。


天ぷら、はたしてお母さんは作れるのかな。
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