愛してるなんて言わないで
そろそろ…駅に着く。
少しでも長くいたいのに、こんな時に限って信号は青になってて。
人混みの中だから、立ち止まることなんてできなくて。
帰りたくない…でも、言えない。
『着いた…な。』
「着いた…ね。」
するっ…と、繋いでた手が離される。
洸くんの体温で温められてた右手の熱が…
消えていく。
「じゃあ…今までありがとう。
たった7ヶ月だけど。洸くんの隣で彼女としていられたのは、幸せでした。」
本当に、さよなら。
『華穂…今までありがとうございました。』
深々と頭を下げる洸くん。
見たくなくて、辛くて。
「こちらこそ。じゃあ…元気でね?
幸せになれ!」
もう…振り向かない。
前を向こう。
涙はここに置いて帰るんだ。
洸くんに手を振らずに帰った日だった。