愛してるなんて言わないで
「あ、じゃあ…いただきます。」
差し出されたアルフォートを食べて、また涙が溢れてきた。
どうしてなの…こんなあたしにも優しくしてくれる人がいるんだ。
それだけで、失恋中のあたしの心は暖かくなった。
「大丈夫…ですか?」
心配そうに聞いてくる。
知り合いでも、なんでもないのに。
「すいません…泣いてて。」
「気にしないでください。元気でました?」
「あ、はい。ありがとうございます。」
見返りも求めずにやさしくできるんだ。
あたしもこの人みたいに優しくなろう。
洸くんを嫌いだと思っていたけれど、
あたしは洸くんが好きだった。
うざったいとかいいながら、洸くんの隣でいるのが当たり前だった。
手放してから、大切なものの価値がわかる。
あたしは身をもって経験した。