愛してるなんて言わないで


その醜い傷を確認するかのように
ひとつずつなぞっていく。

「…っく。ひっ…。」

ポロポロと零れ落ちる涙。

静かになった部屋に吸い込まれていく
小さな嗚咽。


『我慢するな。泣け。喚け。』


ぽんぽん…と、泣く子をあやすかの
ように背中を優しく叩く。

「ふっ…うわーっ…っく。」


怖かった感情を洸くんにぶつけるかの
ように叫ぶ。わめく。訴える。

「怖かっ…た。」


ん。と、背中をさする。


「洸くんが、あの人に見えた。」


ごめん。と呟く。


洸くんに言っても変わることはない。
それでも。洸くんが受け止めると
言ってくれたから。


この気持ち、少しでも届け。

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