愛してるなんて言わないで


でも今は?

洸くんの思いが分からなくなって
好き?って聞いても答えてくれなくて。

それが不安で、右手首には
沢山の醜い傷が増えた。

勲章なんかじゃない、ただ苦しみから
逃れるためにできた傷。


洸くんが見たら怒る?

それとも知らない振りをする?


そんなことも、もう分からない。


ぐるぐると考えてたら
電車がスルスルとホームに入ってきた。


「…。よし。」


重い足を運んで電車にのる。


おかしいんだ。

あたしの心が行きたくないって
拒絶してる。

あたしは、洸くんに気持ちなんてないのに。矛盾してる思考回路と心。


ぐるぐると考えすぎてぎゅーっと
お腹が痛くなった。


何度も経験したことがある痛み。

体の拒絶反応。


それで、ようやく気付いた。

自分が行きたくないってことに。


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