あの場面はどこに
 彼が書いた物語は二人が付き合って終わりではなかった。

 男性は役者として早く成功したかった。それは、女性のためでもあった。どんな役でも一生懸命に演じていたある日、後輩の役者がテレビドラマに出演することになり、名が売れた。

 男性は正直、その後輩より実力が上だと自負していたので、大きな屈辱感を味わった。

「先輩、僕がプロデューサーに紹介しましょうか?」

 この言葉が男性の胸に大きな傷を残した。

 女性の励ましが嫌味に聞こえ邪魔くさくなり、他の女と浮気して歩いた。女と酒で荒んでいく男性を女性は信じて待った。


 この辺は彼の創作だ。それとも、浮気してたのかな。まさかね。

 気付いたら夕方になっていた。それから、彼の小説を読み終えたのは八時を過ぎてしまい、結局、一日を読書に使った。

 帰ってきた彼に言うことはもう決まった。多分、彼が望んでることだと思う。

 私は、彼の気持ちを受け取った。
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