あの場面はどこに
「どこからそんなことになったの?」

「だって、これ……」

 私は本を手に取りページを開いた。

「男性は、女性の献身的な支えで立ち直るでしょ?それを男性は涙を流して、感謝しているわ」

「それで?」

「お酒と女に溺れてしまったところは、あなたの創作よね。でも、後半は違うってわかったの」

「それで?」

「ユウコ、君のおかげで俺は本当に大切なものに気が付いた」

「ちょ、ちょっと、読まなくていいよ。恥ずかしいから」

「今度、大きなオーディションがある。そのオーディションに受かったら、俺と結婚しよう」

「声に出して読まれると恥ずかしいな」

「これって、あなたの気持ちでしょう?小説が入賞したら結婚しようってことでしょう?」

「いや、そんなんじゃ……」

 彼が私の顔を見て言葉を止め、慌てふためいた。

「いや、そうじゃなくて、もちろん、先のことは考えているよ。でも、まだ……」

「まだ、なに?」
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