あの場面はどこに
 何、馬鹿なこと言ってるのよ。このワンピースは、アンタのためじゃなくて、彼のためよ!

 私が言い返そうとしたとき、まさゆきが信じられない言葉を口にした。

「やめてくれないか、あんな嫌がらせ」

「嫌がらせ?」

「脅迫まがいの手紙をポストに入れたり、無言電話したり。彼女が恐がってる」

 この男、どこまで私を馬鹿にするつもり!

「私、そんなことしてないわよ」

「証拠は?」

「アンタこそ、証拠があって言ってるんでしょうね」

「それは……」

 まさゆきが口ごもった。

「アンタって前と変わらないのね。何でも決めつけて話すんだから。アンタには思い当たる人間がいっぱいいるんじゃないの。もしかすると、男かもしれないわね。人のもの横取りするの得意だから」

「ふざけるなよ」

「こっちの台詞よ。誰がアンタのためにワンピースを着たですって?自惚れるのもいい加減にしなさいよ」

「おい」

 まさゆきが私を睨む。

「なによ」

 私も負けじと、睨み返す。
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